藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス 1に載っている、「ミノタウロスの皿」、「カイケツ小池さん」、「ドジ田ドジ郎の幸運」、「ボノム＝底抜けさん＝」、「じじぬき」、「ヒョンヒョロ」、「自分会議」、「わが子・スーパーマン」、「気楽に殺ろうよ」、「喚身」、「アチタが見える」の感想です。オチも含めたネタバレありの感想です。
ミノタウロスの皿
結構、有名な話かな？ある地球人が他の惑星に到着した。その星では二足歩行している牛の様な生き物が住んでおり、地球人のような姿をしているものが家畜として扱われている。主人公は家畜であるミノアがに感情移入しており食べられるのを阻止しようとする。
シンプルな話の構成であり、人間と牛の立場が逆転している。しかし、しっかりと人間も牛も言葉をしっかりと喋っておりコミュニケーションをとっているのが現実と違っているところ。これが面白く、家畜側がしっかりと運命を受け入れており、違和感さえも感じてない。ミノアも他のに比べたら特別扱いというのも面白い。途中で、ズン類とウスの関係性を説明している部分とかもまさしく可笑しいことは言ってないように感じるし、処理されるところも普通のことのようにしているのが、人間の見た目だけでここまで印象が変わるのが凄い。
そして、最後のコマでステーキを泣いてはいるが食べているのが印象深くて、食べない選択をしているわけでは無いのが個人的に好きです。
カイケツ小池さん
小池さんという正義感のみでひたすら動いて、どんな事でも注意をしまくる人がふとスーパーパワーを手にいれるという。行き過ぎた正義は何が起こるのか。
最初の方で、クレーマー気質な部分があって周りからも変な扱いにされているのが分かる。途中で本当に人を助けたりしているので悪人では無いという事が分かるのも良い。しかし、超能力を手に入れたときに自戒をしたりと制御しようとしているが、それでも正義のためと暴力を手段としてやっているのがヤバさが出ており殺すシーンでリミットが外れているのが恐ろしい。しかも言葉のみでも殺すことが可能になったりと酷い。
最後のコマに恐ろしさが詰まっており、台詞での世界を破滅することが出来る、そして左から飛んでくる野球ボール。その後は描かれてないが言葉のみで殺すことが可能になり、短気で怒りっぽい小池さんが行う行動を想像すると。
ドジ田ドジ郎の幸運
ずっとドジな主人公が突然来た調整機構のゴンスケによって悪運偏差をナラスという。
運を均等にするという話で、前二つと比べて暗くて重い話でも無い。調整機構という設定の面白さ、調整するのに分子を操作するというSF的な説明が良い。モノを動かしたりビールを冷やしたりとこの設定に納得感があって良い。
最後の偶然も含めて、今までどれほどの不運だったのか。
ボノム＝底抜けさん＝
仁吉さんというお人好しがいて、ひたすらお人好しの話が続くのですが、ひたすら酷いことをされている。それでも許す。そして、信念を語りだす。
キリストの再来と言われ、仁吉教と言われるくらい許す姿勢が尊敬的な感じに描かれており、最後の衝撃的な展開も許している感じがここまでやると恐ろしい。
じじぬき
家族内で少し浮いている感じがしているじいさん。そして死亡して天国に行き、下界の様子を見始める。
下界の様子を見て、その様子から現世に帰る（実際は予知夢）で結局、状況は変わらない。死亡したときや生き返ったときの反応は本当ではあるけど、という空気感が非常に。そして、最後のシーンも本音でもあるだろう。
ヒョンヒョロ
マーちゃんが、円盤にのったうさぎちゃんから手紙を受け取る。その手紙の内容はきょうはく状だった。それを信用しない大人たち。しかし、徐々に信用することになり相手の要望を聞くことになるが。
ヒョンヒョロというものを狙った犯行で、地球の社会慣習よ尊敬して実行しているが所々にズレが生じている。所々にすれ違い的な事が起きているのが特徴。そして、「誘拐」をしているが、その「誘拐」はトナリノ世界へ送り出す。そして、子供を巻き込むなと言われたときに変則だが約束すると発言。誘拐ヲ実行スル！！の発言で町から人が完全に消えてマーちゃんしか残ってないオチとなった。このオチで最初から聞いてたらこんな事にならなかったというのと、そもそも「誘拐」自体がどうなってるのかが分からないと思った。
地球を学んで「誘拐」を選んだと思うが、最初は場所日時指定をしてない程に理解してなく、そしてずっと近くにいると最後まで理解してない。「誘拐」は他の場所へ移す程度に考えてたのかなぁと。「誘拐」も最初の警察が来た時に常識的ではないと発言があったり、最後に変則としたマーちゃん以外が消えた。本来は全員を「誘拐」するつもりだった。と、もしかしたら「誘拐」された人は無事ではあるのかなぁと考えたり。
自分会議
過去にみたユメと同じ内容の部屋に引っ越した主人公。そして、そこには様々な未来から自分が土地を売るか売らないかの話がありどうするか争う。
オチになる前に、最初の描写から過去から来たと理解する。しかし、そこから、最後のページになる前にすこし様子が違い、この時点でまた別のコースになっていることに気づく。最後のオチで過去が変わったことにより未来が変わったコマが映し出されるの美しい。
未来から過去にくる話は、色んな創作物があり、この話で未来から来た人たちも選択肢が違っている。そして、最後の幼い時もまた違う様子になっている。だけど、最後には全員消えているのが、複数に分かれているコースで、過去は変わるけど本来の未来とは違うのかなぁと考えました。そこまで考えているか分からないけど、コース一本で過去に移動が出来なくて分岐がひたすら行っている。そして、全員が消えるコースが今回だったと。
わが子・スーパーマン
自分の息子であるタダシに何か秘密があるではないかと探り出す。そして、その秘密に気づき。
カイケツ小池さんに似ているようで結構違う。子供の純粋な気持ちによる正義感で悪を退治しようとしている。その悪事も小さいことでも怪我をさせている。最後はガスによる引火で爆死になっている。タダシには確実にスーパーパワーがある。父親だけが真実に気づいている様子で終わっており、正義を暴走すると危ないという描写とこれからどうなるかという。
気楽に殺ろうよ
背中から刃物でもつっこまれたような激痛が起きて、気が付いたら周りが変な風に変わっていることに。性欲と食欲の概念が入れ替わった世界、食事は気はずかしい感じ。そして殺人やこさえることが当たり前になっている。それを病院の先生に相談していって何がおかしいのか話していって納得したときに、最後に元の世界に戻ったが主人公はきづかず殺しを実行しようするところで終わる。
これも、説明が凄く上手くて性欲の何が悪いのか、食欲が恥ずかしいものなのかを説得されそうになるほど説明をしていく。そこから性欲によって、出生率が上がることと殺人が公認されることを繋げていくのが上手い。さらに生命を尊重しなくちゃいけない理由は、作中では説明されていない。この常識に疑う感じが面白い。
そして気になったのが、見知らぬ世界に移動したのが最初に背中から刃物つっこまれたみたいな描写が本当にされたのでは？と考えて、作中内でも別のひとであるが背中から刺されている描写があったりするのは偶然のかなぁと。ただ、最後に戻ったのは理由が無いので考えすぎな気もするが。
喚身
主人公が暴力団の団長と喚身をしてしまう。そこから主人公は彼女に会おうとする。
最終的に主人公と彼女が入れ替わった結果で終わりますが、それでも2人はともに生きることを決める結末になっています。心が大切ですね。
アチタが見える
チコちゃんは未来を見ることが可能である。父親が同僚を連れてくるのも見えており、同僚はそのことが気になり予知能力の話を聞く。チコちゃんは同僚が車とドカーンしている様子を描いた。そして同僚は家から出ないようになる。記者の方がチコちゃんに取材に来て、そこでチコちゃんからこっそりと両親の話を聞いて焦る。最後にチコちゃんが予言したことが続々とあたり、焦る両親。そして最後のコマで。
予知能力の話であるが、この予知能力は未来を変えることが出来ない。そしてチコちゃん自身はこの能力の恐ろしさに気づいてないことが面白い。最後のオチである両親が全く違うということが記者が青ざめていることが気になる。予知能力は変えることが不可能と思っているので、自分としては両親がチコちゃんの能力を怖がっているのと宝くじでお金を得たことからチコちゃんを捨てたのではと。そしてチコちゃんの両親は他の方になったと考えている。チコちゃんがよくわからない発言から何らかの交渉しているところを見たのではないかなぁと。単純な事故やらだと絵に描いたり出来そうなので。
